テキストから
ハイパーデナイテキストへ 

☞ テキスト

いわゆる、文章、文書、あるいはひとまとまりの言葉です。

☞ ハイパーテキスト

<http://…> や <html> の <ht> の部分ですね。
テキストを超えたテキスト、実にかっこいい言葉です。

☞ ハイパーデナイテキスト

片や、こちらはハイパーでないわけです。
つまりテキストを超えられないテキスト、少し頼りない響きです。

しかし、立ちはだかる壁の存在を確認して初めて、それを超える行為の本質に気づくこともあるかもしれません。
テキストがテキストを超えるとはどういうことか。
超えられないもがきの中で一筋の光を見つけられたら仕合わせです。

※テキストを超えられないテキストなら、それは只のテキストでは…という鋭い指摘はグっと飲み込んでください。

☞ ハイパーデナイテキスト、事の始まり ①

2014年某日、ザナドゥ計画のひとつの成果としてオープンザナドゥというソフトウェアがリリースになったというニュースを読む。
ああ、かつてザナドゥ計画と名づけられた妙ちくりんな代物があったよなぁと昔を懐かしむ(実際は、50年以上前の発端から現在まで延々と開発の継続されている計画だった)。

懐古ついでに、そのザナドゥ計画の発案者であるテッド・ネルソンの代表著書『リテラリーマシン』を古書で入手する。
読んでみると、原著は1981年に出版されていたのだと知る。

  ◇

読後、ぼんやりした暇な時間にハイパーテキストへ思いを馳せることが増える。
そんな中、突然のひらめきで田中康夫のデビュー作『なんとなく、クリスタル』を思い出す。
なんとなく文庫版の古書を入手する(作品へのコメントはここでは割愛)。
この本の最初の出版が1981年であったことに気づく。

  ◇

インターネットで田中康夫周辺を調べていたら、まさか…『なんとなく、クリスタル』の続編が近い内に出版されるとのこと。
それはオープンザナドゥのリリースと同じ2014年、なんだこの一致は…と驚く。

驚くだけで終わればよかったが、この奇妙な符合はなにかの啓示に違いないと勝手に決めつける。
そして、続編である『33年後のなんとなく、クリスタル』の発売日を待ちに待ち、勢いよく入手(ここでも感想などのコメントは割愛)。

②へつづく…(はず)

☞ ハイパーデナイテキストへの試み

ハイパーテキストという概念の中では、関連のあるテキスト(どうし)が(双方向に)連結します。
この連結機能を負うハイパーリンクこそがハイパーテキストの肝となっています。
ハイパーリンクはテキストの系統化、無限連鎖、連環を生み出し、ネットワーク上でのシームレスな情報共有と利用を可能にする潜在能力を秘めています。

しかし現在、インターネットの中で作動するハイパーリンクという機能は、それが先天的に究極の相互連環を目指す性質を持つとするならば、未だ完成形とは言い難いものです。
同時に、ハイパーテキストという理想の概念自体が発展途上にあることは確かで、技術的制約や倫理問題を乗り越えて日々進化していることもまた事実です。

  ◇

さて、ハイパーテキストの目指す理想とは別の場所を仮定するのが今回の試みの根本です。
ハイパーデナイテキストでは、テキストの拡張はシステマティックな(あるいはセマンティックな)連結ではなく、連想による偶発的、一時的なひらめきとして構想されます。

人の脳内に生じる連想は強く個性に依存し、気まぐれで欠陥もあります。
インターネット上で隆々と拡大、進化するハイパーテキストシステムに比べれば、個々人の連想に依るテキストの拡張はおよそハイパーと呼べる代物ではありません。
※ですが、当企画はWWW上で発表されますから、せっかくなのでハイパーリンク風の装いも借用します。

  ◇

連想によって(無秩序に)拡張されたテキストがいかに期待される意味やテキストへ収束していくのか、あるいは収束されないのか、新しい試みとしてその経過をぼんやりと観察してみたいと考えています。

どちらに転んだとしても、ハイパーでないテキストの次の着地点の発見に繋がる予感を抱きつつ…。

サンプルの1:
たとえば「亀の甲より年の功」を解きほぐす

☞ 亀

甲羅を背負った例の爬虫類です。水にも陸にもいます。印象として、のんびり屋さん。

☞ うさぎ

のんびり屋さんに対称的な引き合いとしての登場です。うさぎさんに罪はないはずなんですが、自惚れが過ぎる性格という烙印をどこかで押されてしまいました。
しかし一番の原則は、勝負は時の運なのだと思います。

☞ アキレス

経緯は不明ですが、同じく亀の競走相手として引き合いに出される運命の人。悲運にも、亀に勝てない現実に頭を悩ませます。この場合、亀はずる賢い存在です。
それにしても人間と亀、初めから勝負にならないはずなのに。

☞ 同情

結局、亀が獲得しているのは世間の同情票でしょう。事実、歩みは非常にノロいんです。きっと世界一遅いんです。

☞ 大人の都合

とにかく、昔の人は道徳を大事にしたかったのでしょう。

以下、つづく