ふくらみ文庫

書物は世界を無限に広げてくれます。
現実と非現実の境をなくしてくれます。
時間や空間の隔たりもなくしてくれます。
たった一冊の書物が人の人生を変えることもあるし、世界そのものを変えてしまう力すら持っているかもしれません。
もしかすると書物の中には世界のすべてが入っているとも考えられます。

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人が書物に触れる時、楽しみ方は様々でしょう。
純粋に情報を吸収する為であったり、疑似体験を味わう為であったり、他者との接点を求めている場合もあり、感性を磨く手段にしたり、あるいは精神の平安を感じる目的かもしれません。

書物は内にも外にも無限の可能性を秘めていて、またその懐は実に深遠で、私たちの希望や要求を無制限に叶えてくれる気がするほどです。

さてこうして書いてきた中で、たとえば「書物」を「インターネット」に置き換えてみるとどうでしょう。
実に、ひとつの違和感もなく読むことができます。
それではこれらふたつの世界はまったく同質のものでしょうか。
より新しい機能を備えているはずのインターネットの方が多くの点で優れているでしょうか。
長幼の序に従い、即座に書物が優れていると決められるでしょうか。

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もちろん、優劣の視点は必要なものでもありませんし、いつでも脇にのけられます。
今この時期に、改めて書物独自の側面に着目してみれば、書物の持つ本来の価値と可能性をできるところまで突き詰められる気がしています。

書物への愛と夢は大きくふくらむばかりです。